おすすめYA紹介⑤ 「タフィー」

こんにちは。前回更新してから一週間。

なるべく定期的に更新できるよう頑張ります!

私の好きな川島如恵留さんはとても忙しいのに毎日ブログを更新してくれています。おかげでメディア露出が少ない時期でも近況を知ることができて、好き!となります。

時間の使い方が上手い人ってすごいよね…。

 

今日紹介する本はこちら↓

 

タフィー

サラ・クロッサン 作

三辺 律子 訳

 

出版者:岩波書店

国:イギリス

刊行:2021/10/28

ページ数:412p

定価:2100円+税

原題:TOFFEE

カバー画:星野ちいこ

 

 

あらすじ

父親の暴力から逃げ出した16歳のアリソンは行き場を失い、さまよううちに一軒の家の納屋にたどり着く。空き家かと思われた家にはマーラという老女が住んでいた。アリソンは逃げ出そうとするが、マーラは認知症でアリソンのことを昔の友人のタフィーだと思い込んでいるらしい。奇妙な共同生活が始まった。

 

おすすめポイント

物語に深みを加えているのはなんといっても詩のような文体。散文詩形式というらしいのですが、主人公アリソンの独白をダイレクトに、シャープに伝えてくれます。本が分厚く、圧倒されてしまいそうですが、横書きで、余白をたっぷり使ったページ構成なので意外にもさらりと読めてしまいます。

 

 

リモコンどこだ?

父さんが質問する。リモコンはどこだ?/それは、リモコンを探せという意味。

父さんがきく。夕食はなんだ?/それは、腹がへった、食事を出せという意味。

父さんの質問は質問じゃない—要求であり非難だ。わたしを不安に陥れるための武器。

(本文より引用)

 

誰に語るでもないような、心の中に浮かんだ言葉をつぶやくような口調は行く当てもなくさまよう主人公アリソンの苦悩や痛みを歌のようにつづります。

 

父親にひどいことをされても、失望しても、それでも嫌いにはなれない。だってお父さんだから……。

 

書く、というのは自己救済の方法のひとつだと言います。

誰も見ていないと分かっていても辛い気持ちをSNSに投稿せずにはいられなかったり、選ばなかった人生を想像して小説を書いてみたり。

長い時間が経ってからでも、私はあの時辛かったんだと認めてあげることは大事だと感じます。私はあの時こうだったからこうしたけど、本当は辛かったんだ、と。過去の自分を認めてあげられると区切りがついて、過去の事として見ることができるようになるんじゃないかな……。それには時間がかかるかもしれないけれど。

 

散文詩形式は書く、という面においてもいい形式だなと思いました。

 

普段詩を読まない方でも意外なほどに読みやすいので、ぜひ読んでみてください。

 

 

X(旧Twitter)始めてみました♪ @chiekko_2

最近読んだ本紹介①「わたしを離さないで」

こんにちは!

約1年も更新しないブログはもはやブログなのか?という感じですが…。

ここ数年でYA以外にもいろいろなジャンルの本を読んできたので、ゆっくり紹介できればと思います。

よろしければたまにのぞいていってください!

 

 

今日紹介する本はこちらです↓

 

わたしを離さないで

カズオ・イシグロ 作

土屋 正雄 訳

 

出版者:早川書房

国:イギリス

刊行:2008/8/25

ページ数:450p

定価:980円+税

装画:民野 宏之

原題:NEVER LET ME GO

 

 

2017年にノーベル文学賞を受賞して話題になったカズオイシグロの作品です。

私は先日、人生初のコロナになったのですが、この本を枕元に置きちびちびと読んでいました。

高熱の中読む純文学は最高でした!……というのは嘘で、本当に頭がおかしくなりそうでした。あまりにも有名な本なのでネタバレはその辺にゴロゴロと転がっていますが、どうせなら一切ネタバレなしで読みたいと思い、事前情報なしで読み始めたのですが…。

読者に世界観の説明はあまりなく、情報が小出しにされるので読み進めていくうちに分かってくるタイプの書き方です。(なんていう手法?)まあ~読むのに根気のいること…。

 

あらすじ

優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。

(ハヤカワオンライン公式サイトより引用)

 

主人公キャシーの友達、ルースの描写がリアルでした。目立ちたがり屋で女王様気質で、でも二人きりの時はなんでも話せる良い友達で。キャシーとルースはまあまあ喧嘩しがちなので、読んでいてドキドキしちゃいました。過去を振り返る仕方で書かれてるので、常に二人の現在の関係性が気になります。

雰囲気から勝手に18世紀くらいの話かと思っていたら普通にウォークマンがでてきて驚きました。

 

 

昔から、「わたし」をめぐる話…「わたし」とは何かを深く考えるような話が好きです。

生まれた瞬間や生まれる前から、この子はこの家を継ぐのだとか、この子はあの家に嫁に行って跡継ぎを生むのだとか、そうだと既定された人生は楽なのでしょうか、それとも苦しいのでしょうか、それは人によって異なるのでしょうか。

現代を生きる私たちの大多数がそうであるように、何でもできる何でもなれる人生はこれまで生きてきた多くの人々の命の上に成り立っている世界で、人類が求めてきたものですよね。何でも自分でつかみ取れる可能性のある、自由な人生を歩む人は幸せでしょうか?

一方、既定された人生で一生を終える人は不幸せでしょうか?籠の中の鳥や大海を知らない魚のように、開かれた機会としての自由を知らないで人生を終えることはその人生と天秤にかけてももったいないような不幸なんでしょうか。

アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」は人間の感情や指向を数値化するシビュラシステムが個々人の適性を判断してくれて、その通りにすれば大多数の人は幸福のうちに生きることができる話でした。今も適性診断、性格診断、あなたにカスタマイズされたものが流行っているということは、こんなに自由な社会の中でも頼っていいと思える基準、わたしを定めてくれるものが欲しいことの現れですかね。誰だって遠回りしたくはありません。

産業革命と市民革命が起き市民社会が誕生して約200年、もう完成された世界を生きているようでいて、まだまだ私たちは混沌とした中を生きているんだなあと思いました。最近AIが普及してきているけれど、AIが人生を決めてくれる日も近いんでしょうか。(選び取った自由なようでいて決められた枠内の限定的な自由、というのはディストピアものあるあるですね)

 

頭を使って読むので、スマホに侵された脳には良い刺激になりました。

ぜひ、コロナ隔離中などではなく元気な時に読んでみてください♪

 

おすすめYA紹介④ 「アルプスの少女ハイジ」

こんにちは。長かったゴールデンウィークも終わり、また日常が始まったと思うと辛いですね😭

今回紹介する本はアルプスの少女ハイジです。

新生活が始まって1ヶ月と少し、今の環境合ってないかも毎日辛いし仕事辞めたい、学校行きたくない病んでる人におすすめの一冊です。

基本的に私の読書欲はこの辛い気持ちを誰かに分かってほしい心に端を発しているので…YA探索♪とか軽いノリですけど。

 

アルプスの少女ハイジ

ヨハンナ・シュピリ 作

松永 美穂 訳

 

出版者:角川文庫

国:スイス

刊行:2021/1/25

ページ数:430p

定価:1,160円+税

カバー図版:ホドラーユングフラウ、イゼンフルーからの眺め≫

原題:Heidis Lehr- und Wanderjahre、Heidi kann brauchen, was es gelernt hat

 

アルプスの少女ハイジといえばなんといっても国民的アニメが有名ですよね。私も幼い時にDVDで全部見ましたし、徳間アニメ絵本も繰り返し読んでいたのでかなり刷り込まれています。

しかし、アニメの知名度に対して原作はあまり知られていないようで、原作があると言うと驚く人もいるくらいです。

スイスの作家ヨハンナ・シュピリによる原作のタイトルは「Heidis Lehr- und Wanderjahre」(ハイジの修行時代と遍歴時代、1880年出版)および「Heidi kann brauchen, was es gelernt hat」(ハイジは習ったことを使うことができる、1881年出版)。(Wikipediaより)

原題長すぎやしませんか、と思いますが原題はゲーテの作品から着想を得たものらしいです。内容は基本的にアニメそのまま。

挿絵のせいか、心なしかアニメよりも暗っぽく感じるのは私だけでしょうか?

 

福音館古典童話シリーズの矢川澄子訳の箱入り・ドデカ本が重厚な感じで好きなのですが、置いておく場所がないので文庫本を持っています。こっちは軽くて読みやすいです。

ハイジは天真爛漫な幼女というイメージが強いけれど、大好きなアルプスから離され大都会フランクフルトに連れて行かれ、夢遊病になってしまいます。

アルプスの風景に似た美しい絵を見て涙が止まらなくなったり、食事が喉を通らなくなったり…。

 

ハイジはひとりぼっちで部屋の片隅に座って、向かいの家の壁に当たる太陽の光を見なくてすむように、両手で目を押さえていました。そうやって、胸のなかで熱く燃えるなつかしい気持ちを音もなく抑えつけながら、クララに呼ぼれるまで、じっと座っていたのでした。

 

なんかさもうこんな辛い思いしなくていいんだよ涙涙

このハイジの気持ちがドンピシャ刺さってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。私は異動になって辛すぎて、眠れず食べられず情緒不安定でという時期に読んで大号泣しました。

お医者様の判断でハイジは大好きなアルプスに帰るのですが、帰ってからのくだりも最高で、町の嫌われ者で人と関わらないように生きてきたおじいさんの心を溶かしたり実は辛い思いをしていたお医者様の心を救ったりクララの病気を治したり、本当に心が洗われるような物語です。

今の環境が合わなくてヤミヤミしてる人にぜひ読んでほしいです。

この本はそこから抜け出す勇気をくれるんじゃないかと思います。

ぜひ読んでみてくださいね。

 

おまけ

ペーターの目の見えないおばあさんとの初会話はいつ読んでも泣けてしまいます。

 

「ああハイジ、もうけっして見えないんだよ。火のような山も、上の方に咲いてる金色の花もね。この世界ではもうけっして見えない。もうけっして」

するとハイジは大きな声をあげて泣き始めました。悲しみでいっぱいになり、ずっとしゃくり上げています。「誰がまた見えるようにしてくれるの?誰にもできないの?誰も?

 

大人になってから読むと余計に胸に刺さりますね…

おすすめYA紹介③ 「紙の心」

こんにちは。ちえ子です。

みなさんは文通をしている相手はいますか?

私は2人の友達と文通しているのですが、デジタル時代でも手紙っていいですよね。

今回は手紙を小説にした本をご紹介します。

 

紙の心

エリーザ・プリチェッリ・グエッラ 作

長野 徹 訳

 

出版者:岩波書店

国:イタリア

刊行:2020/8/7

ページ数:252p

定価:1,700円+税

装画:カシワイ

原題:CUORI DI CARTA

 

 

あらすじ

森の中の綺麗な施設で暮らす少年はある日、図書館の本に挟まれた手紙を見つける。それは同じ施設で暮らす、顔も名前も知らない少女からのものだった。お互いの姿も知らないまま思いをつのらせるふたり。文通にのめりこむうち、ふたりが暮らす施設の不穏な実体が暴かれていく……。

 

おすすめポイント

この本は書簡体小説というもので、手紙形式で書かれた本です。あまり馴染みがないですよね。私もこの本で初めて知りました。2ちゃんねる風SSとかと雰囲気が似ているような気がします。(もっとも、手紙なので基本的にはふたりだけのやりとりが続くわけですが)

手紙というと昔の設定?と思いますが、ディストピアものなので設定は現代…か、もう少し先の未来でしょうか。謎の研究所で生活する十代の少年と少女が心を通わせていきます。

もちろん2人には施設に来たワケがあるのですが、それは忘れたい記憶を忘れるため。なーんかキナ臭いですよね。施設の謎をめぐって話が進んでいきます。

 

表紙は絶対どこかで見たことのあるイラストレーターのカシワイさん。無味乾燥、近未来、というイメージとピッタリです。また、色使いもかわいく思わず表紙を見せて持ち歩きたくなってしまいます。イタリア語の原題が書いてあるのもおしゃれ!

 

 

ちなみに皆さんはイタリア文学って読んだことありますか?私はパッと思いつかなかったのですが、「ピノッキオの冒険」や「デカメロン」などが挙げられるようです。ネットで少し調べてみましたが、日本ではイタリア文学よりもイタリア映画の方が馴染み深いのかな?という印象でした。おすすめのイタリア文学があったらぜひ教えてほしいです。

 

主人公のダンとユーナは図書館の本に挟んだ手紙でやり取りを重ねていくのですが、出会って数日で恋に落ちていってしまう青春が眩しいです。お互いの姿が分からないからこそ盛り上がるんでしょうか。ネットで知り合った人とは盛り上がりやすい、みたいなもの?

 

走るってことを教えてくれたときから、稲妻みたいに走るあなたを想像してる。わたしのそばを猛スピードで駆け抜けていくあなたを。でも、わたしには、その姿のほんの一部がちらっと見えるだけ。目の中の光や、鼻や、前にのばした脚や曲げた腕が。あなたはけっして完成できないジグソーパズルだね。

キスを

ユーナ

 

ユーナ。ユーナ。ユーナ。ユーナ。きみの名前をいつまでも書いていたい。分かつことのできないユーナ。この世にひとりしかいないユーナ。白鯨みたいに類まれなユーナ。

じゃあ、いまから走りに行くよ。きみに想像してもらえるように。

どうせなら、きみにむかって走れるのならいいのに……。きみがぼくのゴールだったらいいのになあ。

お願いだよ。ぼくに手紙を書くのをやめないでね。

きみの

ダンより

 

なんという健気さ、なんという純情。面と向かって言えないようなクサい言葉も手紙なら易々と伝えられちゃいます。

 

なんとなく察している方もいると思いますが、YA×親子の関係の悪さ=闇、という方程式はここでも成り立っています。

ダンもユーナもリアルすぎてキツい家庭環境を抱えています。ユーナはとある出来事からすれ違うようになってしまった両親の間で、ダンは威圧的な父親といつも疲れている母親の間で生活していました。このあたりの描写がキツいですね……。

こういう辛さってあんまり他人には言えないというか、特にダンとユーナは両親と自分しかいない家庭で育っていて自分以外の目線がないので、自分の意見に自信が持てなくなっちゃうところがあったんじゃないかな~と思います。日本でもイタリアでもあるあるな家庭問題なんだなと思うと複雑ですが。この辛さを文字にしてくれるだけで救われる人もいるんじゃないかなと思うので、ぜひ悩める方には手に取ってもらいたい本です。

 

研究所にいても闇、家へ帰っても闇な状況からふたりがどう抜け出していくのか、研究所の目的は何なのか、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

 

おすすめYA紹介② 「快盗ビショップの娘」

こんにちは。YA好きのちえ子です。
いきなりですが、少女漫画は好きですか?
私は大好きです!
今日は、読む少女漫画的YAをご紹介します。

 

快盗ビショップの娘
アリー・カーター 作
橋本 恵 訳

出版者:理論社
国:アメリ
刊行:2010/4/22
ページ数:397p
定価:1,500円+税
原題:HEIST SOCIETY

 

あらすじ
泥棒家業が嫌で逃げ出したものの、マフィアから濡れ衣を着せられたパパを救うため一族に戻ってきた高校生のカット。パパを救うためには警備の厳重なギャラリーから絵画を盗み出すしかない!

 

おすすめポイント
少女向けティーン小説の名手、アリー・カーターの一冊です。カーター先生の本は女の子たちが魅力的で、自称“普通”の子が全然普通じゃないところに厨二心をくすぐられます。“フツーの高校生”になったつもりだったのに、校長のポルシェを噴水にぶっ刺した罪を着せられ退学になり「私だったらもっと上手くやる」と考えるような女の子が主人公なんてワクワクします。
「快盗ビショップの娘」は何が少女漫画的かといいますと、主人公カットと金持ち坊ちゃんヘールの関係なんですね。友達でも恋人でもない、絶妙な距離のふたりは読んでいてドキドキします。ヘールのちょっと芝居がかったリアクションは金持ちの余裕を感じさせて、これはカットもキュンとするよ〜!と思っちゃいます。そんなヘールもカットが危険な状況に陥ると途端に慌てちゃうんだから可愛い!それにヘールは元々泥棒一族なのではなく、偶然出会ったカットを追って泥棒社会に足を踏み入れてしまったんです。一族じゃないのに好きな子を追いかけて危ない世界に入ってきてしまった男の子、なんて最高じゃないですか~

映画化希望!ですが、ワーナーブラザーズが映画化権を取得したも結局映画化されていないようで残念。
ヘールの他にも美人で美脚のいとこにコンピュータの天才、国際指名手配中のイケメンパパ、イタリアのマフィア等々妄想の膨らむ登場人物たちがたくさん出てきます。

 



2010年初版ということで、当時はAKB48が流行していた頃でしょうか。赤チェックのカバーがかわいいです。しかし、表紙の写真は誰でしょう……?タイトル的に主人公カットをイメージしているのでしょうが、カットは16歳なのでいささか幼すぎる気がします。表紙をデザインした人はこの本を読んだのでしょうか。逆に原作の表紙は大人びすぎな気もしますが…。(海外のレビューにも表紙の女の子が20代に見えるが⁉というコメントがあってなんだか安心 笑)

 

以下、カットとヘールのかわいい会話を一部ご紹介↓

 

「それで……」ヘールは、笑みを浮かべ、ゆっくりとカットにたずねた。
「ぼくに会いたかった?」
腕のいい泥棒は、ウソをつくのもうまい。泥棒にとってウソは、技術であり、道具であり、技でもある。
カットが「べつに」と答えると、ヘールの顔に笑みがさらに広がった。
カットは、ウソをつくのが下手な自分が泥棒稼業から手を引いたのは正解だったかも、と思った。
「カット、ぼくは、きみに会えてすごくうれしいよ!」

 

有名な泥棒一族なのに嘘が下手なカットがかわいい。まあ間違いなく相手がヘールだから、でしょうね……。

 

「ぼくの写真は、よく撮れてるな」と、ヘールが首をかたむけた。「見栄えのいいほうのアングルで撮れてる」
「そんなアングル、あったっけ?」
「知ってるだろ」

 

なんなんでしょうこの自信は!イケメンにしか許されないセリフですね。

 

「カット、おれも仲間に入れてくれよ」
ヘールが、カットをさらにきつく抱きしめた。
「仲間はずれは、ぜったいイヤだ」

 

自信家かと思ったら急な子犬感。これにはグラっときちゃいますよね……。

 

海外YAならではの夢とロマンが詰まった話はまさにティーン向け小説。サクッと読めるので、ぜひ読んでみてくださいね。

 

余談
学生時代、受験勉強が辛い時期は勉強したら本を読み、また勉強して……を繰り返してなんとか頑張っていたのを覚えています。中学生の時、そんな感情を俳句にしたらおーいお茶の佳作に選ばれたのでそういう人は少なくないのかも(笑)
また別の記事で書きたいと思いますが、YAを読むのって英語の勉強とか海外文化への理解とかそんな難しい理由じゃなくていいと思います。(むしろそんな高尚な理由付けをしているように見られたらラッキーですが)私なんか海外YA読んでたって英語苦手ですし……。おもしろいから好き、くらいの軽い気持ちで楽しみたいです。少しでも海外YAに興味を持ってくれたら嬉しいです(*^^*)

ちなみにHEIST SOCIETY、原作はシリーズになっていて何巻も出ていますが日本語版はこの一冊だけ……。そろそろ続き出してくれてもいいんじゃないですかね?ということで、続きが読みたかったらkindleで原作を買って自分で訳さなくてはいけません。やはり海外YAを読むには英語力が必要なのか……(トホホ)

おすすめYA紹介① 「ONE DAY 死ぬまでにやりたい10のこと」


こんにちは。ちえ子です。

海外YAを読むならとびっきりぶっとんだ、キャラの濃い物語が良い!

今回の記事は登場人物たちのキャラが魅力的な本を紹介したいと思います。

この本を読めばイケてるニューヨーク育ち高校生の気分になれること間違いなし!

 

「ONE DAY 死ぬまでにやりたい10のこと」

ダニエル・エーレンハフト 作

古屋 美登里 訳

 

出版者:ポプラ社

国:アメリ

刊行:2005/3/1

ページ数:262p

定価:1680円+税

装画:おおたうに

 

 

あらすじ

ニューヨークに住むテッド・バーガーはロック・ギタリスト志望の16歳。春休みが始まったばかりの学校帰り、親友のマークとマークのガールフレンドのニッキと事件に巻き込まれる。毒入りフライドポテトを食べたことであと24時間しか生きられないことを知ったテッドは残りの人生でやりたいことをしようと、やりたいことを書いた10のリストを実行しようとしていくが……。

 

おすすめポイント

やりたいことリストを死ぬまでの24時間内に大慌てで片づけていく話なので、ものすごいスピード感です。語り口はライトなので、中学生くらいからなら楽しんで読めると思います。私も中学生の時に初めて読みました。当時は中学生特有の憂鬱な気分だったので、「死ぬまでにやりたい」というタイトルに惹かれて手に取ったのですが、ものすごく明るい語りでタイトル詐欺?と思いました。原題が「10THINGS TO DO BEFORE I DIE」なのでこの邦訳はまんまなのですが、もう少し訳し方があったのでは、なんて……。

ま~とにかく主人公のテッド・バーガーと親友のマーク、マークのガールフレンドのニッキが良すぎなんです……。不憫体質の細身バンドマン+お似合いすぎるモデルみたいなカップルって構図、最高でしょ?いつも3人がブース席で押し合うようにして居座っている店「サークル・イート・ダイナー」は脂っこいにおいが立ち込めている暗い店。ニューヨークのダイナーが溜まり場なんて雰囲気最高!(このあたりに良さを感じてしまうのは一時期Dlifeにハマったからでしょうか……)3人が注文するのは決まっていてサークル・イートの5番、バーガーとポテトのコンボ。テッドがポテト、マークがハンバーガー、ニッキがピクルスを食べるんですけど、仲良しでかわいいですよね〜。

 

 

黄色がぱっと目を引く表紙は7Men侍の矢花黎くんでしょうか。(ちがう)表紙をめくったら、ライブ中の矢花黎くん!?(ちがう)

バンドマン系っていうんですか?雰囲気いいですよね……。イラストはおおたうにさん。昔よくフェリシモの広告イラストを描いていらっしゃいましたね。幼い頃好きで眺めていたものです。カバーをめくるとサークル・イート・ダイナーになっています。

 

キャラ立ちがしっかりしてるので、いつか映像化しないかな?と期待しています。隠れた名作、ここにあり!

 

著者近影もなかなかファンキーで好きです。

大体の公立図書館には置いてありますし、Amazonでもやっすく売っているのでぜひ読んでみてくださいね。

おすすめ海外YA 10冊 ①

こんにちは。英語は読むのも書くのも高校レベルですが、海外YA好きなちえ子です。

今回はおすすめの海外YA(一部児童文学)をまとめてみました!

 

私が海外YAにハマり始めたとき、

海外YAが気になっているけど、何を読めばいいのかな……?

いろんなジャンルの海外YAを読んでみたいけど、どうやって探せばいいんだろう?

と思っていたので、同じように感じている方はぜひ読んでみてくださいね!

 

あらすじは公式のものを参考に私が書いたので、分かりにくい部分があると思います……。 ご了承くださいm(__)m

 

目次

 

 

 

ONE DAY 死ぬまでにやりたい10のこと

ダニエル・エーレンハフト 作

古屋 美登里 訳

 

出版者:ポプラ社

国:アメリ

刊行:2005/3/1

ページ数:262p

定価:1,680円+税

装画:おおたうに

原題:10THINGS TO DO BEFORE I DIE

 

ニューヨークに住むテッド・バーガーはロック・ギタリスト志望の16歳。春休みが始まったばかりの学校帰り、親友のマークとマークのガールフレンドのニッキと事件に巻き込まれる。毒入りフライドポテトを食べたことであと24時間しか生きられないことを知ったテッドは残りの人生でやりたいことをやろうと、やりたいことを書いた10のリストを実行しようとしていくが……。

 

ニューヨークを舞台にすごいスピード感で話が進みます。語り口がライトなのでとても読みやすいです。何よりキャラが魅力的!不憫体質の細身バンドマン+お似合いすぎるモデルみたいなカップル、の構図にピンときたらぜひ。

 

快盗ビショップの娘

アリー・カーター 作

橋本 恵 訳

 

出版者:理論社

国:アメリ

刊行:2010/4/22

ページ数:397p

定価:1,500円+税

原題:HEIST SOCIETY

 

泥棒家業が嫌で逃げ出したものの、マフィアから濡れ衣を着せられたパパを救うため一族に戻ってきた高校生のカット。パパを救うためには警備の厳重なギャラリーから絵画を盗み出すしかない!

 

高校を退学になり、自分のことを好きなセレブな男の子が頼んでもいないのにリムジンで迎えに来るところから始まります。主人公カットとセレブな男の子ヘールの関係性にキュンキュンします。いとこは美人で美脚だし、仲間は頼もしい。もう読まない選択肢はないでしょう……。

 

さよならを待つふたりのために

ジョン・グリーン 作

金原 瑞人、竹内 茜 訳

 

出版者:岩波書店

国:アメリ

刊行:2013/7/25

ページ数:338p

定価:1,800円+税

装画:小林 系

原題:THE FAULT IN OUR STARS

 

16歳のヘイゼルはがん患者の集まりで魅力的な男の子、オーガスタスに出会う。ふたりは惹かれ合い、大好きな小説の作者に会うためにオランダへ行くことになるが……。

 

闘病ものの小説は暗いからイヤ、と思ったあなたにこそ読んでほしいです。ヘイゼルとオーガスタスが普通すぎるくらい普通で、病気を美しくも汚くも書いていない。そこになぜだか救われたような気がしました。映画化もしているのでそちらもぜひ。

 

ぼくだけのぶちまけ日記

スーザン・ニールセン 作

長友 恵子 訳

 

出版者:岩波書店

国:カナダ

刊行:2020/7/16

ページ数:288p

定価:1,700円+税

装画:中田 いくみ

原題:THE RELUCTANT JOURNAL OF HENRY K. LARSEN

 

太っちょの13歳、ヘンリーはこの街に引っ越してきたばかり。なぜかというと、兄のジェシーがいじめっ子を銃で撃ち殺し自分も死んでしまったから。ひっそりと生きていきたいのにオタクの友達やアパートのうるさい隣人が放っておいてくれなくて……。

 

扱うテーマは重いのに、口調が軽いから辛いけど読めてしまう。兄が起こした事件で壊れてしまった家族の再生の物語です。初めて読んだとき、最後まで読まなくては眠れなくて、深夜に泣きながら読了しました。こんなに泣いたのは久しぶりってくらい泣きました。こんな可愛い表紙ですが、表紙詐欺レベルで家族や人生、逆境に会った時の人の力について深く考えさせられます。

 

紙の心

エリーザ・プリチェッリ・グエッラ 作

長野 徹 訳

 

出版者:岩波書店

国:イタリア

刊行:2020/8/7

ページ数:252p

定価:1,700円+税

装画:カシワイ

原題:CUORI DI CARTA

 

森の中の綺麗な施設で暮らす少年はある日、図書館の本に挟まれた手紙を見つける。それは同じ施設で暮らす、顔も名前も知らない少女からのものだった。お互いの姿も知らないまま思いをつのらせるふたり。文通にのめりこむうち、ふたりが暮らす施設の不穏な実体が暴かれていく……。

 

珍しい書簡体小説です。ふたりの恋文が延々綴られていくのですが、めちゃくちゃ甘いです。でも、甘い言葉に交じって語られるふたりの家庭の話などはなかなかエグくて、そのギャップに引き込まれます。家庭環境に鬱屈としたものを抱える人はかなり響くんじゃないかなと思います。

 

穴 HOLES

ルイス・サッカー 作

幸田 敦子 訳

 

出版者:講談社

国:アメリ

刊行:1999/10/22(ハードカバー)

ページ数:310p

定価:1,600円+税

原題:HOLES

 

中学生のスタンリー・イェルナッツは、不運に見舞われやすい家系。スタンリーは冤罪で逮捕され、矯正施設のグリーン・レイク・キャンプに送られる。不毛の大地のど真ん中にあるキャンプで毎日ひとつ穴を掘らされる日々。しかしこの穴、実は少年たちの矯正のためのものではないようで……。ある日、決死の脱走を試みる!

 

今回おすすめする本の中で唯一、人から教えてもらった本です。めちゃくちゃ有名です。あまりにも読みやすいし面白いです。謎の矯正施設で延々と穴を掘らされるのには裏の理由があって……なんて設定、読みたくなるに決まっています。文庫版も出ているので本棚にも置きやすいですね!

 

山賊のむすめローニャ

アストリッド・リンドグレーン 作

大塚 勇三 訳

 

出版者:岩波書店岩波少年文庫

国:スウェーデン

刊行:2001/10/18

ページ数:375p

定価:836円

原題:Ronja Rövardotter

 

落雷で二つに裂けた古城に住む2組の山賊たち。敵同士の家に生まれた少女ローニャと少年ビルクは次第に仲良くなり、こっそりと会うようになる。しかしある時親にばれてしまい、ふたりは家を飛び出して森の中で一緒に暮らすようになるが……。

 

いくら岩波少年文庫でも児童文学だし、となめていると凄まじいパンチを食らいます。友情、恋、親からの独立、成長。そこにほんのりファンタジックな世界観。一族が全てで他の社会なんてないのに、気持ちに逆らえず親や仲間の目を盗んでこっそり会うシーンは読んでいてドキドキします。冒険系甘酸っぱい小説。

 

青い城

ルーシー・モード・モンゴメリ 作

谷口 由美子 訳

 

出版者:角川書店

国:カナダ

刊行:2009/02/25

ページ数:350p

定価:705円+税

原題:THE BLUE CASTLE

 

29歳の独身女のヴァランシーは余命1年と宣告される。一族のしきたりに縛られ、生きているといえないような人生を送ってきた彼女は、残りの人生を後悔しないものにしようととんでもない行動を起こす……。

 

YAというより少女小説に近いですが……。本当は自分だけのものにしたいくらい大好きな小説で、何度も読み返しています。モンゴメリの小説は素晴らしい自然描写が特徴で、この本は四季折々の美しい描写がギュギュっと詰め込まれています。うるさい親族からの解放、自分の気持ちを出して生きること。自然描写に癒され、主人公の勇気に元気づけられます。

 

怪物はささやく

シヴォーン・ダウド 原案 パトリック・ネス 著

池田 真紀子 訳

 

出版者:あすなろ書房

国:アメリ

刊行:2011/11/07

ページ数:221p

定価:1,760円(ハードカバー) 880円(文庫)

装画:ジム・ケイ

原題:A MONSTER CALLS

 

病気の母親と暮らす少年コナー。ある夜、イチイの木の姿をした怪物が現れ、物語を語りだした。そして怪物が三つの物語を語り終えたら、今度はコナーが四つめの物語を話さなければならないという。少年は何を語らなければならないのか……。

 

書いていて思いましたが、意味不明なあらすじですね。テーマは喪失と再生、でしょうか。少年の表出しない心の叫びが痛くて切なくて、思春期に出会っていたら読むのが辛かったかもしれません。(私が学生の頃、読書感想文の課題図書だったんですけどね)何度読んでも物凄く泣けます。映画化もしているので、物語の全容が分かるまで読み進めるのに苦労する人はそちらを先におすすめします。

 

10 二つ、三ついいわすれたこと

ジョイス・キャロル・オーツ 作

神戸 万知 訳

 

出版者:岩波書店

国:アメリ

刊行:2014/1/28

ページ数:340p

定価:1,800円+税

装画:山田 緑

原題:TWO OR THREE THINGS I FORGOT TO TELL YOU

 

元子役でカリスマ的な魅力をもつティンクが死んだ。ティンクと仲良くしていたメリッサやナディアはティンクの死からなかなか立ち直れない。そんな中、彼女たちも家族や友人関係の問題を抱えていき……。

 

切なくて、痛くて、ひりひりします。中高生が対象のスタンプブックスから出てはいますが、ある程度大人になった人向けでしょうか。自殺、自傷、親の離婚、男の子からの嫌がらせ、年上の教師への行き過ぎた思い。10代の心の声があまりにもリアルで、読んでいて辛くなるほどです。おすすめに入れるか悩みましたが、忘れられない本なので入れてしまいました。

 

 

おすすめ海外YA10選でした!

 

全て大抵の図書館には所蔵されているので、今度ぜひ探してみてください♪

また、一部は電子書籍でも配信しているのでお手軽に読めますよ。

気になった本があったらぜひチェックしてみてくださいね。