こんにちは!
約1年も更新しないブログはもはやブログなのか?という感じですが…。
ここ数年でYA以外にもいろいろなジャンルの本を読んできたので、ゆっくり紹介できればと思います。
よろしければたまにのぞいていってください!
今日紹介する本はこちらです↓
わたしを離さないで
カズオ・イシグロ 作
土屋 正雄 訳
出版者:早川書房
国:イギリス
刊行:2008/8/25
ページ数:450p
定価:980円+税
装画:民野 宏之
原題:NEVER LET ME GO
2017年にノーベル文学賞を受賞して話題になったカズオイシグロの作品です。
私は先日、人生初のコロナになったのですが、この本を枕元に置きちびちびと読んでいました。
高熱の中読む純文学は最高でした!……というのは嘘で、本当に頭がおかしくなりそうでした。あまりにも有名な本なのでネタバレはその辺にゴロゴロと転がっていますが、どうせなら一切ネタバレなしで読みたいと思い、事前情報なしで読み始めたのですが…。
読者に世界観の説明はあまりなく、情報が小出しにされるので読み進めていくうちに分かってくるタイプの書き方です。(なんていう手法?)まあ~読むのに根気のいること…。
あらすじ
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設へールシャムの親友トミーやルースも「提供者」だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。
(ハヤカワオンライン公式サイトより引用)
主人公キャシーの友達、ルースの描写がリアルでした。目立ちたがり屋で女王様気質で、でも二人きりの時はなんでも話せる良い友達で。キャシーとルースはまあまあ喧嘩しがちなので、読んでいてドキドキしちゃいました。過去を振り返る仕方で書かれてるので、常に二人の現在の関係性が気になります。
雰囲気から勝手に18世紀くらいの話かと思っていたら普通にウォークマンがでてきて驚きました。
昔から、「わたし」をめぐる話…「わたし」とは何かを深く考えるような話が好きです。
生まれた瞬間や生まれる前から、この子はこの家を継ぐのだとか、この子はあの家に嫁に行って跡継ぎを生むのだとか、そうだと既定された人生は楽なのでしょうか、それとも苦しいのでしょうか、それは人によって異なるのでしょうか。
現代を生きる私たちの大多数がそうであるように、何でもできる何でもなれる人生はこれまで生きてきた多くの人々の命の上に成り立っている世界で、人類が求めてきたものですよね。何でも自分でつかみ取れる可能性のある、自由な人生を歩む人は幸せでしょうか?
一方、既定された人生で一生を終える人は不幸せでしょうか?籠の中の鳥や大海を知らない魚のように、開かれた機会としての自由を知らないで人生を終えることはその人生と天秤にかけてももったいないような不幸なんでしょうか。
アニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」は人間の感情や指向を数値化するシビュラシステムが個々人の適性を判断してくれて、その通りにすれば大多数の人は幸福のうちに生きることができる話でした。今も適性診断、性格診断、あなたにカスタマイズされたものが流行っているということは、こんなに自由な社会の中でも頼っていいと思える基準、わたしを定めてくれるものが欲しいことの現れですかね。誰だって遠回りしたくはありません。
産業革命と市民革命が起き市民社会が誕生して約200年、もう完成された世界を生きているようでいて、まだまだ私たちは混沌とした中を生きているんだなあと思いました。最近AIが普及してきているけれど、AIが人生を決めてくれる日も近いんでしょうか。(選び取った自由なようでいて決められた枠内の限定的な自由、というのはディストピアものあるあるですね)
頭を使って読むので、スマホに侵された脳には良い刺激になりました。
ぜひ、コロナ隔離中などではなく元気な時に読んでみてください♪